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ジュラルミンとは?

図1 A. Wilm ( Aluminium, 17(1935), 502)
図1 A. Wilm ( Aluminium, 17(1935), 502)

超々ジュラルミンのホームページなので超々ジュラルミンとは何かを語る必要があります。その前にジュラルミン,超ジュラルミンという材料開発があり,まずジュラルミンから始めたいと思います。ジュラルミンの元になるアルミニウム合金は,1906年ウィルム(図1 A. Wilm, 独ヴィルム)が時効硬化現象を発見したところから始まります。

1901年,ウィルムはベルリン近郊の理工学中央研究所に招聘されて,薬莢に使用されている真鍮に替わる軽くて強度の高いアルミニウム合金を探していました。アルミニウム合金の元になるアルミニウム地金はエルー・ホール法で安価にできることがわかり価格は随分と下がっていました。銅や鉄は古くから,マグネシウム,ケイ素,亜鉛,マンガン,クロムなども当時の製錬技術で金属単体で取り出すことができていました。金属同士を混ぜ合わせると硬くなることは銅合金ではよく知られていましたので,アルミニウムも他の金属と混ぜ合わせた合金の研究が行われていました。比較的早くからAl-Mg合金やAl-Zn合金が検討されていました。また鉄は焼入れするとその場で硬くなることがわかっていましたので,ウィルムはAl-Cu-Mg-Mn合金に注目して焼入れ実験を行っていました。

 

図 ウィルムの論文に掲載されたAl-3.5%-0.5%Mg合金の室温時効硬化曲線(縦軸:硬度,横軸室温保持時間(h))
図 ウィルムの論文に掲載されたAl-3.5%-0.5%Mg合金の室温時効硬化曲線(縦軸:硬度,横軸室温保持時間(h))

ここから先は有名な話で,1906年9月のある土曜日に定時間際に助手にAl-4%Cu-0.5%Mg-0.5%Mn合金を焼入れ実験をさせて硬度を計らせましたが,その時は硬度はほとんど変化しませんでした。休み明けの月曜日に再度この合金の硬度を計らせたら硬度が高くなっているのがわかり,この結果が正しいか何度も追試して,この合金は室温で保持していくとだんだん硬くなるという「時効硬化」現象を発見しました。早速この合金の特許を取得しました。この合金実用化のために実験を続けていましたが,彼を招聘した研究所長が交替し,新任の所長は彼の実験結果に興味を示さないため,1909年彼は特許を自分のものとし研究所を辞して,Dürener Metallwerke A.G.のベック博士の協力を得て工業化に成功しました。

 

1909年WilmとDürener Metallwerke A.G.の間でこの新製品に対する商品名の相談があり,Wilmは当初ドイツ語で硬いという意味のHartをつけたHartaluminiumを提案しましたが,国際市場を考え,フランス語で硬いというDurを用いてDuraluminにしました。Duraluminは地名のDürenから来たという説も昔から言われてきていましたが,フランスのエコール・ポリテクニークのO.H. Duparc博士によると,ドイツ人の多くはDüralumin(Dürener-Alumin)よりDur-Aluminとして理解しているとのことです。

 

ところでDuraluminは戦前ではヂュラルミンとカタカナで記述されていたが,いつからかジュラルミンと書かれるようになった。発音の表記上は戦前の方が正しいようにも思われるが如何であろう。