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アメリカの最近の本から,75Sに関して

しばらくブログをご無沙汰していました。2ヶ月ぶりの更新です。6月のカナダの国際会議で講演発表するためその準備に追われていました。

最近の本で75Sについて書かれていたため,kindleで購入して読んでいます。

本は「Aluminum in America, A History」,著者はQuentin R. Skrabec, 技術史の専門家らしいと思われます。出版社は McFarland & Company, Inc., Publishers, Jefferson, North Carolina, (2017)。アルミニウム合金およびその用途についても相当詳しい方と思われます。

ここでは75Sについて書かれた個所(p.142より)を紹介します。米国の本でここまで正確に書かれている本は少ないのでとりあげました。他の個所についてもいずれ紹介したいと考えます。

 

Research on these alloys was performed at ALCOA, and the first commercial composition was 76S, used for aircraft propellers in 1940. ALCOA was able to address stress corrosion cracking by adding small amounts of chromium to the alloy. This led to the commercial alloy 75S (now 7075), which contains 5.5 percent zinc. This innovative alloy was introduced during World War II as the structural metal on Boeing’s B-29 Superfortress long-range bomber. The reduced weight due to the 75S enabled the addition of significant numbers of bombs to the B-29 payload. Most of the Japanese aircraft were built on their top-secret equivalent of 75S (7075) aluminum alloy developed by Sumitomo Metal Industries in 1936, ahead of ALCOA’s research. ALCOA was probably aided by the capture of a Japanese Zero early in the war. In June of 1942 a Zero crash-landed but was virtually undamaged. The Zero was recovered in the Aleutian Islands and the U.S. military was able to see and fly, firsthand, this advanced fighter aircraft, as well as analyze the aluminum used.

 

これらの合金に関する研究はアルコアで行われていた。その最初に実用化された合金が76Sであり,1940年航空機のプロペラに使用された。アルコアはクロムを微量添加することで応力腐食割れ問題に対処することができた。このことが亜鉛を5.5%含む実用合金75S (現在は7075)の開発につながった。この革新的な合金は第二次世界大戦で,ボーイングB-29 Superfortress 長距離爆撃機の構造材料に用いられることとなった。75Sを用いることで重量軽減ができB-29に数多くの爆弾を積載することが可能となった。日本の航空機の大半は,1936年に住友金属工業で開発された日本の最高機密に相当する75S(7075)アルミニウム合金を用いて製造されていた。この開発はアルコアの研究に先立って行われた。アルコアは多分戦争の早い段階で日本の零戦を捕獲することでできたものと思われる。1942年6月胴体着陸した一機の零戦はほとんど無傷であった。この零戦はアリューシャン列島で復元され,米軍はこの優れた戦闘機について使用されているアルミニウムの分析はもちろんのこと,直接観察し飛行させることもできた。