· 

ボーキサイトの起源

 

1.地球の構造

 

 地球の構造は,地球は地殻(5-70 km),上部マントル(70-670 km),下部マントル(670-2890 km),外核(2890-5150 km),内核(5150-6360 km)に分けられている。

 

 地殻は地球の最も外側にある層で,海底にある薄い部分(5-10km)は海洋地殻で,玄武岩(SiO250%)のように高密度の鉄やマグネシウムを含むケイ酸塩の火成岩で構成されている。より厚い地殻は大陸地殻で,これは密度が低くて,花崗岩(SiO270%)のようにナトリウムやカリウムやアルミニウムを含むケイ酸塩岩石で構成されている。日本列島のように海洋と大陸の境界に位置する島弧は花崗岩と玄武岩の中間的な組成をもつ安山岩(SiO260%)の岩石からなっている。玄武岩は42.9%,花崗岩は10.4%,安山岩は11.2%,変成岩と堆積岩が35.3%を占めている。

 

 大陸地殻の平均化学組成は,二酸化ケイ素 SiO2 59.8%,酸化アルミニウムAl2O3 15.5%,酸化カルシウムCaO 6.4%,酸化鉄FeO 5.1%,酸化マグネシウムMgO 4.1%である。大陸表層の75%以上,全地球表層の90%以上は堆積岩あるいは堆積物で覆われている。地殻における主要な元素の量比を表に示す。地殻では酸素,ケイ素,アルミニウム,鉄,カルシウム,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,チタン,水素の順である。アルミニウムは酸素,ケイ素に次いで多く,8.13%存在する。

 

 マントルは上層の地殻に比べて鉄とマグネシウムが豊富なケイ酸塩岩石で構成されている。固体ではあるが,マントル内の高温によってケイ酸塩物質には十分な延性があり,非常に長い時間尺度で流動することができる。マントルの対流は,プレート運動となって地上に表れる。核は、半径約1220kmの「固体」である内核と,その外側にプラス約2200km(中心からの半径は約3400kmまで)にわたる「液体」の外核という2つの部分に分けられる。 

 

 内核は主に鉄と若干のニッケルで構成されていると一般的には考えられている。約46億年前とされる地球形成の初期段階では高密度の物質が中心に向かって沈み込み,密度の低い物質は地殻へと移動させられる。このようにして核は大部分が鉄(80%)で,残りがニッケルとケイ素を含んだもので構成されていると考えられている。

 

 元素が占める割合は,地球全体では多いものから鉄,酸素,ケイ素,マグネシウム,ニッケル,硫黄,カルシウム,アルミニウム,ナトリウム,クロムの順である。

 

 

2.造岩鉱物(ケイ酸塩鉱物)(藤岡換太郎,三つの石で地球がわかる,ブルーバックス,講談社(2017).  より)

 

 酸素とケイ素は結びつきが最も造岩鉱物を作りやすく,岩石ができやすい。造岩鉱物のほとんどはケイ酸塩鉱物という種類で,その基本構造は酸素原子4個とケイ素原子1個が結びついた正四面体の形をしている。これをSiO4正四面体と呼ぶ。これが結晶を作るための基本単位で単位胞と呼ばれる。単位胞がいくつも規則的に繋がることで様々な結晶が作られ,様々な造岩鉱物ができる。

 

 SiOが共有結合するためには酸素原子の最外殻電子が6個であと2個の電子が入れば安定化し,ケイ素は最外殻電子が4個であと4個の電子があれば安定化する。SiO4正四面体では中心のケイ素は4個の酸素原子と1個ずつ共有するとケイ素は電子の空席は埋まるが酸素は各原子に1個の空席ができる。酸素原子が安定化するためには

 

1)SiO4正四面体の酸素原子が,別の原子から電子を1個もらうか,別の原子と電子を共有する。

 

2)SiO4正四面体の酸素原子が,他のSiO4正四面体とケイ素原子を共有する。

 

これらの方法によってSiO4正四面体は,他の原子や分子と結合し様々な構造の結晶を作り,様々な造岩鉱物ができる。

 

     SiO4正四面体の酸素原子がマグネシウム(イオン半径0.7Å)や鉄原子(0.6Å)から電子を調達してくる形(イオン結合)で安定化している。SiO4正四面体が単独でバラバラに存在する。橄欖石。Si : O = 4 : 1

 

     SiO4正四面体にマグネシウム,鉄,カルシウム,ナトリウム,アルミニウム,クロム,

 

リチウムなどの原子が結合する。SiO4正四面体同士が,1個の酸素原子を共有して結合したものが,一本の鎖のように長くつながる。輝石。Si : O = 3 : 1

 

     ②は1本の鎖であったが,2本の鎖でできていてそれがくっついた構造になっている。

 

共有する酸素原子は場所によって2個ないしは3個となっている。この構造では真ん中に大きな空間が形成されるためOH,水酸基が入ることができる。こうした鉱物は水を生み出すことができるので「含水鉱物」と言われる。角閃石。

 

     SiO4正四面体が酸素原子3個共有していて,平面を構成する二次元的な繋がりになっている。このような結晶構造を「平面的網状型」という。分子間の隙間は大きな空間でOH受け入れることができ,含水鉱物となる。雲母。白雲母はカリウムやアルミニウムを含む。

 

     4個の酸素原子をすべて隣接するSiO4正四面体と共有している。したがって酸素原子が事実上2個となり,SiO2の結晶とみなされる。このような構造を「立体的網状型」という。鉱物全体の酸素とケイ素の比率は2:1となる。緊密な構造で分子間隔は小さくなり,OHは入りこめなくなる。石英,長石。石英の純度の高いものは水晶。長石はナトリウム,カルシウム,カリウムが入り込んだ固溶体である。

 

 

 

  マントルは橄欖岩,主に橄欖石と輝石からできている。海洋地殻は玄武岩で,橄欖石,輝石,斜長石,磁鉄鉱でできている。これに対し,大陸地殻は花崗岩で,主に石英,斜長石,正長石からなる。岩石は地下の高温高圧下で溶けたマグマが冷えて固まる時に融点の高いものから固まるが,花崗岩は最後に残った液体のマグマからできる火成岩のものと,地下深くにある堆積岩が高温高圧下で水が十分あると堆積岩が溶けて花崗岩質マグマになる変成岩のものがある。さらに最近では玄武岩質マグマからできた安山岩による最初の地殻が溶融して花崗岩からなる大陸地殻が形成されたこともわかってきた。花崗岩はゆっくり冷えて,時には数百万年かけて固まるが,冷却過程で結晶が分離し,残った溶液には様々な元素が溶け込み濃縮する。また粘性が高いためにゆっくりと上昇することでも周辺の岩石を溶かして様々な元素を溶かしこむ。

 

(酒井治孝:地球学入門,東海大学出版部,(2015), 169.)
(酒井治孝:地球学入門,東海大学出版部,(2015), 169.)

3.造岩鉱物の化学的風化過程

(酒井治孝:地球学入門,東海大学出版部,2015より)

 

 ケイ酸塩鉱物は化学的風化作用により不溶性の残留物である粘土と可溶性の成分に分解される。後者の一部は水和・酸化され沈殿するが,残りは河川により運搬され,海水にもたらされる。岩石の風化プロセスは次のように分解することができる。         

 

① 岩石と弱酸性の水あるいは有機酸が反応し,アルカリ・アルカリ土類金属がイオンとなって水に溶け出す溶脱が生じる。

 

② アルカリ・アルカリ土類金属が水に溶けた結果,中性からアルカリ性になった水にケイ素が溶脱される。

 

③ 岩石と腐植(土壌微生物の活動により動植物遺体が分解・変質した物質の総称)の有機酸が反応し,鉄やアルミニウムも溶脱される。鉄やアルミニウムは水と反応し,水酸化鉄や水酸化アルミニウム(ボーキサイトなど)を形成する。

 

④ 溶脱したケイ素やアルミニウムおよびナトリウム,カルシウム,マグネシウムイオンが結合し,粘土鉱物が形成される。

 

 粘土鉱物の代表的なものにカオリンあるいはカオリン鉱物がある。カオリン鉱物を主成分とするのがカオリン粘土である。カオリン粘土は古くから,陶磁器,耐火物,製紙,鋳型粘結剤,塗料,込む,化粧品,医薬品,鉛筆,織物などに利用されてきた。カオリンの主成分がカオリナイトと呼ばれる鉱物である。カオリナイトはシリカ(SiO2),アルミナ(Al2O3)と水(H2O)でできている。酸化物の組み合わせで書くとAl2O3SiO2H2O,結晶構造を反映した構造式で表すとAl2Si2O5(OH)4となる。結晶構造は二種類の網状シートを作り,この二種類の二次元的なシートが積み重なって,三次元的な層状構造を作っている。二種類のシートの一つはケイ素と酸素が作る四面体シート,もう一つはアルミニウムと水酸基が作る八面体シートで重要な構造単位となっている。

 

 正長石+二酸化炭素+水 → カリウムイオン+カオリナイト(粘土)+ケイ酸

 

 2KAlSi3O8 + 2CO2 + 3H2O2K+ + 2HCO3- + Al2Si2O5(OH)4 + 4SiO2

 

カオリナイトは加水分解され,難溶性のアルミニウムの水酸化物(ボーキサイト)とコロイド状ケイ酸となる。

 

 

 4.土壌の形成

 

 粘土に腐植(微生物によって分解された植物遺体)が加わったものが土壌である。水温が上昇しイオン化の程度が高くなり,降雨量が多くなるほど化学的風化は促進される。従って気候帯によって特有の土壌が形成される。熱帯のラテライト(赤色土)がその一種である。

熱帯地域では高温多湿なため微生物の活動が盛んでそのため植物遺体が分解されてしまい,また降雨で腐植酸が流されてしまう。その結果Al, Feが水酸化物として地表近くに残留し,赤色土が形成される。熱帯,亜熱帯,モンスーン,サバンナ気候下では,乾季と雨季が半年ごとに交互し,それと共に地下水位が大きく下降・上昇する。雨季が始まると弱酸性の雨水は岩石中に浸透し,アルカリを溶脱する。降雨が続くとアルカリ性の地下水は地表まで上昇し,Siが溶脱する。その結果,難溶性のFeとAlが凝集し,水酸化鉄と水酸化アルミニウムとなって残留土壌は赤茶・赤紫色を呈する。